Vol.37 試合での「成功体験」を積み重ねる―ミスから脱却する新しい視点
- 園部貴弘
- 5月6日
- 読了時間: 3分
ゴルフは、ラウンド後の振り返りが重要だと言われる。
しかし、僕自身、ラウンド、特に試合でのミスについては、できる限り思い出さないようにしている。なぜなら、失敗を繰り返し心に刻むことで、それが「ミスの上書き」になり、深層心理に強く焼き付いてしまうからだ。僕がこの考え方を意識するようになったのは、知り合いのストラテジーコーチ・松本進さんとの出会いがきっかけだった。

松本進さんは、アメリカで心理学とスポーツ科学を融合させた「マインドアンダーパー理論」を学び、それを元に多くのスポーツ選手を成功へと導いている方だ。彼の教えは明快で、「うまくいったことだけを思い出し、それを繰り返す」というもの。失敗ではなく、成功の感覚を深層心理に焼き付けることで、自信とパフォーマンスが向上するのだという。

たとえば、松本さんが語っていたアメリカの大学ゴルフチームの事例では、スイングの技術的な指導はほとんど行わず、選手たちが「自分のベストプレー」をイメージするトレーニングに注力した結果、無名だったチームが全米チャンピオンシップの常連校になったそうだ。彼らは「うまくいったショット」の記憶を鮮明に思い描き、それを自分の中で繰り返すことで、試合での再現性を高めたという。
この話を聞いてから、僕もラウンド後の振り返りを「成功体験」にフォーカスするように変えた。
以前は、「あのホールのセカンドショットをミスしたからダブルボギーになった」とか、「パー3でクラブ選択を間違えた」など、なぜスコアーを落としたのかを考えていた。しかし、それではミスを引きずるだけで、次の試合で同じ状況に立ったときに、無意識に「またミスをするかも」という不安を抱えてしまうだけだった。
今は、ラウンド後に「成功したショット」だけを思い返すようにしている。たとえば、「15番ホールでの21度のUTのサードショットが完璧に決まってパーオンした」とか、「13番ホールで読み切ったロングパットが気持ちよく沈んだ」といったポジティブな体験を記憶に残す。さらに、ラウンド後の練習場ではその「成功体験」を再現する練習を繰り返すことで、成功の記憶を体に刻み込む。
松本さんのアプローチが面白いのは、「人間は、同時に2つ以上の事を考えられない」という、シンプルな思考の原理を逆利用し、ミスを排除するのではなく、「成功を優先する」点だ。彼によると、人間の脳は失敗の記憶よりも成功の記憶を強く認識する性質があるという。だからこそ、成功のイメージを繰り返し心に焼き付けることで、パフォーマンスが大きく変わるのだ。
たとえば、僕の最近のラウンドでは、イーグルレイクの理事長杯決勝の18番ホールでのティーショットが強く印象に残っている。

試合の最後という緊張感の中、狙い通りのフェアウェイセンターにドライバーでピタリと運べた。そのおかげで、セカンド、サードショットも思い通り決まり、結果はパーで上がってくることができた。
これを思い返し、そのときのスタンスやスイングリズム、集中の仕方を何度もシミュレーションすることで、同じ状況が来ても迷いなくスイングできるようになった。
ゴルフはミスがつきものだが、それを「心の中に置かない」ことが重要だと感じている。うまくいったショットを積み重ね、それを再現できるようにする。そのためには、振り返りの方法をポジティブなものに変え、練習の中で成功の記憶を強化していくことが必要だ。
「ミスを引きずるのではなく、成功を未来につなげる」。これが、松本さんの教えを通じて得たゴルフで良いスコアーを出すための新しい視点だ。僕自身、試合でのメンタルが以前よりも安定し、スコアも少しずつ改善しているように感じている。 もっとも、小西プロは「失敗を思い出して、それを修正しろ」との教えではあるが・・・
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