top of page

Vol.39 「風」と戦う―見えない敵との駆け引き

ゴルフにおいて「風」は、もっともやっかいな相手の一つだと思う。コース設計やグリーンの速さ、ピン位置などは、ある程度の経験値で対応できるが、風だけはその日その時、刻一刻と変化する。しかも、目に見えない。打ち上げか打ち下ろしか、林に囲まれているか開けているか、風向きや風速を読む要素はあっても、確実な答えがない。

先日行われたイーグルレイクゴルフクラブの「理事長杯」の予選。風速6~8メートルというコンディションだった。イーグルレイクはOBが多く、池も絡むトリッキーなレイアウト。こうした日に一番試されるのが、風との向き合い方だと感じていた。


小西プロには以前から、「風が強いときは、スピンを減らして風の影響を少なくする」と教えられていた。そのためには「短く持ち、リズムはゆっくりと」「強く叩かない」「鋭角にヘッドを入れない」「番手をあげて優しく打つ」ことが大切だと。正直、当初はそこまでのコントロールはできなかったが、最近は少しずつそれが身についてきている。実際この日も、抑えたスイングと球の高さを意識することで、難しいホールでも比較的安全なショットが打てていた。


けれど、勝負の流れはいつもスムーズにはいかない。問題はロングの15番ホール。フェアウェイはキープしていたが、極端な左足上がり。セカンドを刻むか、それとも得意のクリークで距離を稼いでパーを狙いに行くか。迷いながらも「ここで攻めないと予選は厳しい」と判断してクリークを選択した。結果、無理な体勢のまま強めに振ってしまい、ボールは高く上がって風に乗り、どんどん左へ流れていった。フェアウェー右側に打ち出したが、左奥に向かって、ぐんぐん曲がる。気がつけば、OBゾーン。

そのホールはダブルボギー。試合を終えてスコアを確認すると、予選通過まであと2打足りなかった。まさにあの1打が明暗を分けた。風に「勝とう」としたことが、裏目に出た。

この経験から強く感じたのは、「風は攻略するものではない」ということだ。無理に押さえ込もうとするのではなく、「風のなかで何ができるか」「どうすれば風を受け入れられるか」を考える方がずっと建設的だ。風に対して「戦う」のではなく、「共にプレーする」くらいの意識でいたほうが、結果として安定する。


「風を読む」というと、風向きや強さに意識が向きがちだが、本当の意味で大事なのは「自分の球筋がどう変化するか」を知ることかもしれない。追い風で飛距離が何ヤード伸びるのか、アゲンストではどのくらい落ちるのか、横風ではどの方向に流されるのか。

競技ゴルフでは、こうした一打の選択が大きな差につながる。そしてそれは、スイングの上手さではなく、「状況判断」と「感情のコントロール」にかかっていることが多い。 風は、見えない敵でありながら、最高の先生でもある。そう思えるようになってから、風がある日のゴルフが、嫌いでなくなった。

Kommentare


bottom of page