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Vol.40 “運”も実力のうち?―ラッキーとアンラッキーをどう捉えるか

競技ゴルフを続けていると、「これはもう実力じゃないな」と思える場面に、何度も遭遇する。

完璧なショットが木に弾かれてOBになったり、逆に、ミスショットが奇跡的な跳ね方をしてピンに寄ったり。ゴルフは「自然との対話」とも言われるが、そこに加わる“運”という要素が、思いのほか大きい。


イーグルレイクゴルフクラブでの理事長杯の予選の時。13番ホールで、僕は「運」の両側面を一気に味わうことになった。


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このホールは、左右ともに池。そしてフェアウェイにはバンカーがありその先も池という、神経を使うミドルホールだ。前日に小西プロと練習ラウンドをしており、そのとき「ここは無理せず、スプーンで刻んだほうが安全」とアドバイスを受けていた。僕も納得して、当日は迷わずスプーンを手にした。というかぶっちゃけ、練習ラウンドではドライバーで打ち、飛びすぎて、そのまま池にいれてしまったからだ。


スプーンでのナイスショット。距離は減るが精度は高い。しかし、ティーショットのボールは、運悪くカート道に当たって跳ね、ポンポンと前に進み、まさかの池ポチャ。刻んだ意味がまったくない、なんとも言えない展開に、思わず空を仰いだ。「なんでこんなことに……」と呆然としたのは言うまでもない。


とはいえ、ゴルフは「次の一打が最も大切」なスポーツだ。池の救済を受けた地点から、「ここで乗せればパーは拾える」と気持ちを切り替えてセカンドショットを放った。ところが、意識しすぎたのか、力が入り、ボールは明らかにトップ気味。「池か…?いや、奥のバンカーか……」そう思った瞬間、奇跡が起きた。


ボールはグリーン手前の土手に当たり、跳ね返って勢いが殺され、そのままコロコロとピン方向に転がっていった。結果、ワングリップ以内に止まり、まさかのパー。

まるで、神様が帳尻を合わせてくれたような1ホールだった。


ゴルフにおいて「運」をどう捉えるかは、人それぞれだ。もちろん、すべてを運のせいにしていては上達しない。しかし、真面目に準備して、冷静にマネジメントしても、不可抗力の結果が出ることはある。そして、その直後に予想外の“幸運”が訪れることもある。ひとつのミス、ひとつのラッキーショットで心を乱し、全体の流れを壊してしまうのは、非常にもったいない。


いくつか前に紹介したメンタルコーチの松本進さんが、アメリカでのスポーツ指導でこんな話をしてくれた。「良かった場面だけを思い出し、それを何度もイメージすることが、深層心理に成功体験を上書きする」という。ミスを反省材料として振り返ることはもちろん必要だが、それ以上に、「うまくいったとき」の感覚を脳に焼き付けておくことの方が、競技ではプラスに働くというのだ。


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あの13番ホールのことも、今では「グリーン手前の土手に当たって寄ったナイスショット」として、自分の中に記憶するようにしている。運に左右されたプレーだったが、それでも“結果”はパー。それが事実だ。


運はコントロールできない。しかし、「運に動じない自分」を育てることはできる。

ラッキーも、アンラッキーも、受け入れる。冷静に、淡々と、次の一打に集中する。その積み重ねが、競技ゴルフでの真の強さになると、僕は信じている。

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