top of page

Vol.41 距離感は“磨ける感覚”―数値に頼らず感性を鍛える方法

ゴルフにおいて、「距離感」はスコアを大きく左右する要素だ。

それは単なる数値の把握ではなく、風やライ、傾斜を感じ取り、スイングやクラブ選択に反映させる“感覚”の世界でもある。僕自身、この距離感に対する意識が大きく変わったのは、昨年末にメンバーになった江戸崎カントリークラブでの体験がきっかけだった。


ree

江戸崎の東コースでは、キャディー付きの歩きラウンドとカートのセルフラウンドが選べる。以前の僕なら迷わずセルフを選んでいたが、何度かキャディー付きで回ってみて、その面白さと奥深さに気づかされた。GPSや距離計に頼らず、キャディーの「残りはピンまで135ヤード。ただ、少しフォローが吹いているから8番で軽く」が、そのまま判断の材料になる。その距離を「感じて」クラブを選び、スイングする。最初は不安もあったが、慣れてくると、数字を超えた“プレーの質”が上がってくるのを実感できた。


そんな中でふと思い出したのが、2年前の夏、小西プロのキャディーとして同行した「日本プロゴルフ選手権」のことだった。あの時、僕はプロの試合の裏側を間近で見た。


ree

プロはGPSも距離計も使わない。散水栓やフェアウェイの模様、木の位置、グリーンの奥行き、そうした目印をもとに歩測し、計算して距離をはじき出す。コースメモはびっしりと書き込まれた練習ラウンドで得た情報、ピン位置によって変わる落としどころ。すべてが、数字以上の“感覚の積み重ね”で成り立っていた。


ree

その経験は、僕の距離感に対する価値観を根底から変えた。数字はあくまで参考。大切なのは「体に染み込んだ感覚を信じること」だと知った。


距離感を磨くには、数値に頼らないラウンドも有効だと思う。だから僕は江戸崎の東コースを回るときは、なるべくGPSや距離計を使わず、目視と感覚でプレーしている。すると、芝の柔らかさや風の微妙な変化、木の揺れ方までが情報になる。風景から読み取れる距離の感覚も、回数を重ねるごとに精度が上がってくる。


そして、その“感覚の貯金”が、他のコースや試合でも活きる。風の強い日や、距離計が使えない状況でも、不安なく構えられるようになった。数字ではなく、自分の中の“基準”で判断できることは、競技ゴルフにおいてとても大きなアドバンテージになる。


もちろん、数値を否定するつもりはない。初めてのコースや競技では、距離計は心強い味方だ。ただ、数字に頼るだけでは磨かれないものもある。だからこそ、普段のラウンドや練習で、「数値から少し離れてみる時間」を意識的に作ることが、プレイヤーとしての“感覚の幅”を広げてくれるのではないだろうか。


ree

プロゴルファーのように、風景と体感と経験からコースマネジメントを組み立てる──そんなプレーを目指して、今日も江戸崎のキャディーラウンドで、距離感という感覚を磨いている。

コメント


bottom of page